『きみの鳥はうたえる』を観ました。良くて、良すぎて、クラクラしました。例によってパンフを読む前に独断と偏見で感想文を書いておりますが、これからご覧になる予定やご興味がある方は、ここから下は読まないで上映館へどうぞ!!
この作品はいわゆる青春映画なのですが、数々の作品があるなかで、なぜこの映画がダントツに心に響いたのかなあと帰り道に考えていました。
早朝の匂い、深い夜の匂い、アパートの匂い、バイト先のビルの匂い。花々。場末の酒場。病院。共同生活のごちゃごちゃした部屋。私たちはその愚かさを振り返る時、不思議と苦かった断片ほど愛おしく思い出します。若さとは痛みの連続で、最低だな、死んじゃいたいな、と思っても、なぜか夜が明けると元気になっている。重い心を引きずる時、来る日も来る日も地べたに這いつくばってるように思うけれども、その柔らかい身体にはちゃんと羽が生えていたのかもしれません。どんなに混沌としていても若い私たちはめげなかったし、捨ててしまわなくても生きることができた。そして成長と共に整えられてゆくプロセス。この映画では、そうしたたくさんの愛しい欠片が散りばめられていました。
私は小さい子どものように映画を観たり音楽を聴くのでしょう。知識や教養がなくっても、制作の背景を知らなくっても、グーっと惹きつけられる作品が好きです。たとえば映画だと、俳優さんの名前とか監督のこととかも忘れてしまって、場内の灯りがついた途端に「あっ!」とこちら側(現実)に帰ってくる体験が好きです。書きながらいま思ったのですが、どういう作品にそう感じるのかは人それぞれなのでしょうね。
俳優陣、とくに主役の3人(柄本拓、石橋静河、染谷将太)は最高でした。私も尋ねたいな。「若さって、なくなっちゃうもんなのかな」
素晴らしい夢を、ありがとうございました。